Ai Weiwei / Interlacing

Added on by Yusuke Nakajima.

Ai Weiwei (艾未未/アイ・ウェイウェイ、1958年中国・北京生まれ)は、世界的に著名な現代美術作家のひとり。非常に博識で、コンセプチュアルかつ社会批判的なスタンスをとるアーティストであり、衝突を生み出したり真実を形作ることに生涯を捧げています。
建築家・コンセプチュアルアーティスト・彫刻家・写真家・ブロガー・ツイッタラー・インタビューアーティスト・文化批評家としても活動する彼は、時事問題や社会問題におけるセンシティブなオブザーバーであり、日常にアートを、またアートを日常をもたらす偉大なる伝達者ないしネットワーカーとも言えるでしょう。
日本でも作品に触れる機会が多く、2009年に森美術館で開催された個展では46万人を動員し、2013年には映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」が上映されました。

本書は、ウィンタードゥール写真美術館(スイス)からジュ・ド・ポーム国立美術館(パリ)へ巡回した、アイ・ウェイウェイの写真とビデオ作品における初めての大規模な展覧会にあわせて出版されました。

アイ・ウェイウェイはニューヨークを拠点にしていた頃からすでに写真を撮っていましたが、北京へ戻ってからより活発になりました。中国における日常的な都市や社会のリアリティを絶えず記録し、それに分析的観点を織り交ぜながら、ブログやTwitterを通じて議論を交わし、コミュニケーションを図っています。
夥しい数の写真はフィルムに収められた情景から携帯電話のカメラで撮影された現代社会までに及び、彼の記録活動は決して一過性のものではなく、息長く継続していることが伺えます。

アイ・ウェイウェイは意図的に中国や世界の社会情勢に直面していきます。
ラディカルな都市の変容。2008年5月に発生した四川大地震の犠牲状況に関する調査。上海にある彼のスタジオが破壊されたときのことを捉えた記録。彼の芸術写真のプロジェクトとともに、彼の数百数千に及ぶブログの投稿、ブログにアップした写真、携帯電話で撮影した写真(数多くの芸術的な宣言がともに綴られている)といった記録的側面のある作品もあわせて展開されています。
写真という記録媒体を通じて、進歩という名の下に建築学的な皆伐の進行や世界の計測への挑発を浮き彫りにし、一方で「Study of Perspective」(政治的な施設やアイコニックなランドマークなどに向けて中指を立てた左手を突き出す構図の写真群からなるシリーズ。権力(究極的には拒絶)というアーティストとしての視点を物語り、鑑賞者に対していかなる権力層に向けても疑う余地のない服従を挑んでいる)を通じて、彼の個人的なポジショニングを明らかにします。

なかでも、2007年のドクメンタ12で発表されたプロジェクト「Fairytale」は非常に興味深いです。
これまでに海外渡航の経験がない1,001人の中国市民をドクメンタの会場であるカッセルに呼び寄せるという「生きたインスタレーション」。各々の市民を中国国内の大使館近くで単独撮影した写真が並びます。
中国の人口のうち大多数を占める貧民にとって、言うまでもなくパスポートやビザを手に入れて外国へ旅立つことは極めて難しいこと。海外への旅は最早現実的な出来事というよりは「Fairytale(童話)」のようだ、という意味合いが込められています。

写真やビデオを用いた一連のプロジェクトを通じて、アイ・ウェイウェイの多様性や複雑さ、つながりにフォーカスをあて、数百にも及ぶ写真やブログ、解釈上のエッセイなどから、彼の「交絡」や「ネットワーク」をみていくことになるでしょう。

 

Ai Weiwei / Interlacing
Steidl
496 pages
Softcover
170 x 236mm
English
ISBN: 978-3-86930-377-6
05/2011